第1編 総則
第1章 通則
一般に、会社とは、営利を目的とする社団法人であると説明されます。
①営利性:経営・事業活動により利益を得て、その利益を配分します。
②社団性:構成員の結合が密接でない集団です。
③法人性:法律上、権利・義務の主体となります。
- 第1条(趣旨) 会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
- 第3条(法人格) 会社は、法人とする。
第2章 会社の商号
会社法上の会社は4種類です。
①株式会社:社員の地位が株式という細分化された割合的単位の形式をとります。社員(株主)は、各自の株式の引受価格を限度とする有限責任を負うだけで、会社債権者に対し直接の責任を負いません。
②合名会社:会社債権者に対し直接連帯無限責任を負う社員のみからなる会社です。
③合資会社:無限責任社員と有限責任社員からなる会社です。
④合同会社:有限責任社員からなる小規模閉鎖会社です。
商号とは、商人が営業上、自己を表現するために用いる名称のことです。商人が商号について有する権利を商号権といいます。
①商号使用権:他人から商号の使用を妨害されない権利です。会社法8条1項では、不正目的でもって、他社と誤認のおそれのある商号を使用してはならないものとしています。
②商号専用権:他人が同一または類似の商号を不正に使用することを排斥する権利です。会社法8条2項では、不正目的での使用により営業上の利益を侵害する者に、その侵害の停止又は予防を請求することができるものとしています。
名板貸とは、ある商人(名板貸人)が他人(名板借人)に自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを許諾することです。看板貸、名義貸ともいわれます。会社法9条では、このことによって誤認して取引した者に対し、連帯して責任を負うものとしています。
- 第6条(商号) 会社は、その名称を商号とする。
2 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
3 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。 - 第7条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止) 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
- 第8条 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。 - 第9条(自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任) 自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
第3章 会社の使用人等
会社は、支配人を選任することができます(会社法10条)。支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする包括的代理権を有します(会社法11条1項)。会社は、支配人の代理権に制限を加えることができますが、そのことを知らない善意の第三者には、対抗することができないものとしています(会社法11条3項)。
支配人は、会社の許可を受けなければ、競業が禁止されています(会社法12条)。
表見支配人とは、会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を与られた者であるが、包括的代理権を有していない者をいいます。このような名称を与られた者と取引をした相手方が、代理権を有していないことを知らなかったときは、外観に対する信頼を保護するというものです(会社法13条)。
代理商は、会社のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その会社の使用人でないものをいいます(会社法16条)。代理商は、会社の許可を受けなければ、競業が禁止されています(会社法17条)。
- 第10条(支配人) 会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
- 第11条(支配人の代理権) 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 - 第12条(支配人の競業の禁止) 支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自ら営業を行うこと。
二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
三 他の会社又は商人(会社を除く。第24条において同じ。)の使用人となること。
四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。 - 第13条(表見支配人) 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
- 第14条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人) 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 - 第16条(通知義務) 代理商(会社のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その会社の使用人でないものをいう。以下この節において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、会社に対して、その旨の通知を発しなければならない。
- 第17条(代理商の競業の禁止) 代理商は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
二 会社の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 代理商が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって代理商又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。
第4章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等
譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、一定の範囲で譲渡した事業と同一の事業を行ってはならないものとしています(会社法21条)。
譲受会社は、譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、次の場合を除き、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うものとされています(会社法22条)。
①譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合。
②遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合、その通知を受けた第三者。
さらに、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合は、譲渡会社の事業によって生じた債権について、譲受会社にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有するものとされています。
- 第21条(譲渡会社の競業の禁止) 事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法 (昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
2 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3 前2項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。 - 第22条(譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等) 事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。
2 前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。
3 譲受会社が第1項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、事業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
4 第1項に規定する場合において、譲渡会社の事業によって生じた債権について、譲受会社にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。 - 第23条(譲受会社による債務の引受け) 譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して弁済の請求をすることができる。
2 譲受会社が前項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。