iseeit.jp 法律

『コンプライアンス』、そして、ファイナンスや情報通信のそれぞれの分野の『関連法律知識』を重点テーマとしていきます。

和解の確定効

和解は、争いの当事者が、自治的に争いをやめることを目的とした諾成・不要式契約です。

和解契約により、確定された事項は、仮に真実に反していても、和解契約の当事者はその内容に拘束され、新たな法律関係が創設されたことになります。このことを和解の確定効といいます。

錯誤との関係

和解契約にも、原則として錯誤の規定(民法95条)が適用されますが、和解の確定効との関係が問題となります。

まず、合意した事項自体の錯誤については、無効とはならないとされています。

つぎに、合意した事項自体でない事項で、たとえば、疑いのない事実として予定されていた事項についての錯誤や、争いの対象外であった事項についての錯誤の場合には、民法95条が適用されるとされています。

示談と後遺症

示談は、一般に、当事者が裁判外で和解をする場合をいいます。示談が成立した後に、予想されなかった後遺症などの損害が生じた場合には、示談契約、権利放棄条項の効力は否定すべきとされています。

示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は示談の当時予想していた損害についてのみのものであって、その後の不測の損害について拘束するものではないとされています。

公序良俗違反

和解契約の内容が公序良俗(民法90条)に反する場合、和解は無効です。

参議院と衆議院

憲法は、国会について、両院制を定めています。参議院と衆議院です。両院の関係をいくつか復習してみることにします。

 

まず、両院の活動について。

(1) 独立活動の原則。両院はそれぞれ独立に議事を行い、議決します。
(2) 同時活動の原則。両院は同時に召集され、同時に閉会します。

 

つぎに、憲法上の衆議院の優越について。以下の議決において、衆議院と参議院が異なるときは、衆議院の優越が定められています。

(1) 法律案の議決。59条。法律案について、衆議院で可決し、参議院がこれと異なった議決となったとき、衆議院で 2/3 以上の多数で再び可決したとき、法律となります。(衆議院の再議決の前に両議院の協議会(両院協議会)を開くこともあります。)
(2) 予算の議決。60条2項。両議院の協議会(両院協議会)を開いても意見が一致しないとき、衆議院の議決を国会の議決とします。
(3) 条約締結の承認。61条。
(4) 内閣総理大臣の指名。67条。

 

なお、両院独立活動の原則の例外として、両院協議会があります。両院協議会が開催されるのは、つぎのようなときです。

(1) 法律案の議決(59条)について、衆議院で可決し、参議院がこれと異なった議決(否決または修正)をした場合、衆議院の要求、または、参議院が要求して衆議院が同意したときに開催されます。
(2) 予算の議決(60条2項)、条約締結の承認(61条)、内閣総理大臣の指名(67条)について、参議院と衆議院で異なった議決をした場合、必ず、両院協議会が開催されます。両院協議会で意見が一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決となります。

 

そのほか、衆議院のみに定められている権限があります。

(1) 予算先議。60条1項。
(2) 内閣不信任案決議。69条。

 

このようなことから、参議院は衆議院に対して第二院というように見られることもあります。ところが、議員の任期は、衆議院議員が4年。衆議院が解散されれば、この任期前に終了してしまうこともあるのに対して、参議院議員は6年。参議院議員は、衆議院議員よりも安定した議員活動が見込まれます。また、参議院議員は、3年ごとに半数改選というしくみがとられており、それぞれの選挙時における焦点・争点が必ずしも一致しない議員で構成されることも特徴と感じます。

 

ちなみに、両議院が対等とされるものです。

(1) 皇室の財産授与についての議決。8条。
(2) 予備費の支出の承諾。87条2項。
(3) 決算の審査。90条1項。
(4) 憲法改正の発議。96条。

 

第42条[両院制]

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

 

第59条[法律案の議決、衆議院の優越]

1 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

 

第60条[衆議院の予算先議及び衆議院の優越]

1 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

2 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は、参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

第61条[条約の承認についての衆議院の優越]

条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。

 

第67条[内閣総理大臣の指名、衆議院の優越]

1 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって、これを行う。

2 衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

第69条[衆議院の内閣不信任と解散又は総選挙]

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は新任の決議案を否決したときは、10日以内に、衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

オプトアウト(opt out)

個人情報保護などに関連して、よく目にするようになった用語のひとつにオプトアウト(opt out)があります。

実際には、いくつかの使われ方があるようなのですが、主に次のような場合をいうことが多いようです。

 

(1)ユーザの許可なしに広告などのメールをそのユーザ配信し、その配信メール中などに配信拒否の手続方法を明示しておくこと。および、ユーザが配信拒否をすること、がいわれます。

この場合に関しては、悪意者から送信されている場合もありますので、不用意に配信拒否の手続すらしないほうがよい場合もあります。

なお、事前に配信の許可がされている場合をオプトインといいますが、できる限りこのオプトインの方法により配信し、配信中でも配信終了の手続方法が明示されているのが望ましいように思われます。

 

(2)個人情報保護法では、個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供してはならない、という原則があります。

ただ、この例外のひとつとして、第三者提供に当たりあらかじめ、本人に通知し、又は、本人が容易に知り得る状態に置くとともに、本人の求めに応じて第三者への提供を停止することが、「第三者提供におけるオプトアウト」といわれます。

 

関連して、平成18年度上級システムアドミニストレータ試験の午前試験問題の問32をみてみます。試験問題の全文については、情報処理技術者試験センターの Web サイト http://www.jitec.jp/ にて公開されています。

問32 オプトアウトの手続に該当するものはどれか。

ア 電子メールで商品の購入を申し込んだユーザに、商品の利用方法を送付する際には、当該電子メールが不要な場合の連絡方法も記載しておく。

イ 取引に関連してクッキーを利用し個人情報が収集される場合があることをユーザに説明し、当該行為について事前に本人の同意を得ておく。

ウ ユーザが登録した個人情報を第三者に提供する場合には、事前に本人の同意を得ておく。

エ ユーザ登録の際に”新商品の情報を希望”という項目を選択できるようにしておき、これを能動的に選んだユーザに新商品情報を送付する。

答えは、ア。

個人情報取扱事業者の義務

「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない。」(第3条)

としており、「個人情報の保護に関する法律」を解釈するにあたっては、このことを念頭におくことが重要となります。

さて、「個人情報の保護に関する法律」において、個人情報取扱事業者とは、「個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。」(第2条)と定義されています。

なお、対象外となる者も規定されています。概略的に、いくつかあげると、国の機関や地方公共団体、一般私人(事業の用に供しない者)、小規模事業者(事業の用に供する個人データによって識別される人数が5,000以下のもの)などのほか、個人情報を取り扱う目的が報道活動、著述活動、学術活動、宗教活動、政治活動などの場合です。

個人情報取扱業者の義務として、「個人情報の保護に関する法律」に規定されているのは主として次のようになります。(首相官邸のホームページ http://www.kantei.go.jp/ にて公開されている内容を参考にしています。)

 

1.目的の明確化と利用の制限に関して

・利用目的をできる限り特定しなければならない(第15条)

・利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならない(第16条)

・本人の同意を得ずに第三者に提供してはならない(第23条)

 

2.収集の制限に関して

・偽りその他の不正な手段により取得してはならない(第17条)

 

3.データの内容に関して

・正確かつ最新の内容を保つように努めなければならない(第19条)

 

4.安全保護に関して

・安全管理のために必要な措置を講じなければならない(第20条)

・従業員・委託先に対する必要な監督を行わなければならない(第21条、第22条)

 

5.公開に関して

・取得したときは利用目的を通知又は公表しなければならない(第18条)

・利用目的等を本人の知り得る状態に置かなければならない(第24条)

・本人の求めに応じて保有個人データを開示しなければならない(第25条)

・本人の求めに応じて訂正等を行わなければならない(第26条)

・本人の求めに応じて利用停止等を行わなければならない(第27条)

 

6.責任に関して

・苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない(第31条)

機密情報と不正競争防止法

旧司法試験の過去論文試験問題をみてみます。

問題の全文については、法務省の Web サイト http://www.moj.go.jp/ にて公開されています。

平成13年度【刑法】第2問
『製薬会社の商品開発部長甲は,新薬に関する機密情報をライバル会社に売却して利益を得ようと企て,深夜残業中,自己が管理するロッカー内から新薬に関する自社のフロッピーディスク1枚を取り出した上,同じ部屋にあるパソコンを操作して同ディスク内の機密データを甲所有のフロッピーディスクに複写し,その複写ディスクを社外に持ち出した。その後,甲は,ライバル会社の乙にこの複写ディスクを売却することとし,夜間山中で乙と会ったが,乙は,金を惜しむ余り,「ディスクの中身を車内で確認してから金を渡す。」と告げて,甲からディスクを受け取って自己の車に戻り,すきを見て逃走しようとした。乙は,車内から甲の様子を数分間うかがっていたが,不審に思った甲が近づいてきたことから,この際甲を殺してしまおうと思い立ち,車で同人を跳ね飛ばして谷底に転落させた。その結果,甲は重傷を負った。
甲及び乙の罪責を論ぜよ(特別法違反の点は除く。)。』

平成元年度【刑法】第2問
『A会社の技術職員甲は、同社が多額の費用を投じて研究開発した新技術に関する機密資料を保管し、時折は研究のため自宅に持ち帰っていた。B会社の社員乙は、A会社の機密を不正に獲得することを企て、甲に対し、その保管する当該資料のコピーの交付を依頼し、礼金の半額100万円を支払い、残りの100万円はコピーと引き替えに支払うことを約束した。甲は、コピーを作成する目的で当該資料を一旦社外に持ち出し、近くのコピーサービスでコピーを一部作成し、30分後に当該資料を会社の保管場所に返却した。その後甲は、発覚をおそれてそのコピーを渡さずにいたが、乙に督促されたため、個人的に所有する別の資料のコピーをA会社の機密資料であると偽って乙に渡し、残金の100万円を受け取った。
甲及び乙の罪責を論ぜよ。』

 

どちらの問題においても、甲は、自社の機密を不正取引のために持ち出しています。そして、この点について、甲の罪責は「刑法」上、それぞれ異なる結果となることが考えられます。

 

平成13年度第2問における甲は、「自己が管理するロッカー内」から「新薬に関する自社のフロッピーディスク」内の「機密データ」を「甲所有のフロッピーディスクに複写」している。「刑法」上、情報自体は財物として認められていません。よって甲の罪責は、窃盗や横領にあたるとはいえず、結果、背任にあたると考えられます。

平成元年度第2問における甲は、「時折は研究のため自宅に持ち帰って」いた「新技術に関する機密資料」を不正取引のために「一旦社外に持ち出し」、「コピーサービスでコピー」しています。「刑法」上、資料上の情報は財物として認められています。よって甲の罪責は、窃盗あるいは横領にあたると考えられます。甲は「機密資料を保管」する立場であることから、結果、横領にあたると考えられます。(そして、乙に対する行為は詐欺にあたると考えられます。)

 

つまり、「刑法」上は、不正目的に情報を持ち出したとしても、その行為の状況によって罪責が異なることが考えられます。

 

「不正競争防止法」の平成15年改正で、営業秘密の刑事的保護が導入され、平成17年改正で、営業秘密の刑事的保護が強化されることとなりました。

「不正競争防止法」における「営業秘密」とは、

(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)

(2)事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)

(3)公然と知られていないこと(非公知性)

と定義されています。そして、この「営業秘密」を不正の手段により取得・使用・開示する行為を「不正競争」としています。また、「営業秘密」の保有者から「営業秘密」を正当に示された者が、不正利益目的・加害目的で使用・開示を行う行為も「不正競争」としています。

さて、上記問題の甲の行為が「不正競争」に該当するかどうか。とくに「秘密管理性」が問題となりそうです。

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 (2011.08.28 21:00)